風を読む人

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CRAFTRIPビデオグラファー

熊谷 拓郎

今回滞在したのは、茨城県かすみがうら市。そこで出会った人は「船に乗り続け、船を遺そうとする男たち」。決して豊かさにはつながらない、それでも乗り続ける人たちの想いに、これからを生きるヒントが隠されているかもしれない。

私が滞在したのは10月のこと。レンコンの葉が枯れ始め、秋が深まっていた。

茨城県は肥沃な大地に恵まれて、全国でも有数の一次産業が盛んなところだ。その中でもかすみがうら市は、市名の由来にもなっている霞ヶ浦を有し、水産業で栄えた町。

ワカサギ、シラウオ、ウナギ、コイなど、多様な魚種が生息している。

ただ、近年の水温の変化による漁獲量の減少や、漁師の高齢化に伴い、霞ヶ浦の漁業は厳しい局面に立たされている。

そして今年になって、漁業が盛んな地域である旧霞ヶ浦町は過疎地域指定を受けることになった。

ただ、その中でもある船に乗り続ける人がいると聞いて、足を運んだ。

その船とは「帆引き船」。帆をはり、風の力で進むそうだ。

私は滞在中、帆引き船の「生き字引」と呼ばれ、現役で乗り続ける88歳の男と、その意思を継ごうとする「漁経験の無い素人」の男と出会った。

なぜ、船に乗り続けるのか。なぜ、嬉しそうな表情で、霞ヶ浦を眺めているのか。

その理由を知りたくなって、カメラを回すことにした。