番外編
「松阪を着る」-Matsusaka cotton-

CRAFTRIPビデオグラファー
平間 達也
地域ブランドを守ろうと働きかけているのは、食肉の分野だけではない。古くから伝統を紡ぐ、情熱を持った人々に出逢った。
「江戸時代、二人に一人は着ていた」と云い伝えられているのが 「松阪もめん」。
⸺風情があり、派手すぎない
その着物が持つ繊細で美しい縦縞は松阪縞と呼ばれ、江戸の庶民にとって“粋”とされた。
今も昔も、松阪もめんは手織りで紡がれている。
巻きが早くとも遅くともいけない。ほつれて弱い糸になってしまう。
幾度も幾度も、染めと乾燥を繰り返さなくてはいけない。色落ちするようになってしまう。
しっかりと横糸を打ち付けなくてはいけない。密度の粗い、よじれた布になってしまう。
これらの繊細な工程を経て、手織りにしか出せない風合いが宿るのだ。
松阪の町を歩いていると、至る所に、松阪縞を見ることができる。松阪駅、駅前の商店街、観光案内所、飲食店にも。地域に誇りを持ち、伝統を紡いでいく人々の姿こそが、松阪もめんが紡いだ「人の美しさ」なのかもしれない。
今日はどんな思いを込めて、機を織るのだろうか。