松阪で継承される日本の心

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CRAFTRIPビデオグラファー

平間 達也

「松阪に来たらこの人に会わなきゃいかんよ」と、食事処を営むご夫婦に教えていただいた場所がある。ご夫婦の言葉を頼りに、JR松阪駅前の商店街から伊勢街道へ折れ、一本裏の通りへ。すると、趣のある建物が目に入る。東村さんが営む、東村呉服店だ。

建物の外観は、古き良き”和”と、洗練された”新しさ”を感じさせる造りになっている。

下調べはしていたが、予約の電話はしていない。取材のアポも取っていない。ただ、この先に何があるのだろうと好奇心を煽られ、足を踏み入れた。

内階段を上り、戸を開けると、まるで自然の中にいるような開放的な空間が広がっていた。二階に位置する部屋であるが天井が高く、たくさんの窓から自然光が差し込んでいる。

呆気に取られていると、お茶を運ぶ東村さんの姿があった。

「こんにちは。お一人かしら?」

「こんにちは。はい、一人です」

「ジンジャーエールがおいしいよ」

私は席に着き、棚に並んでいる絵本やアクセサリーを眺めた。松阪の歴史にまつわる本、着物の本、子供向けの絵本。すっかり見かけなくなったCDコンポからは、聞き覚えのあるBGMがこぼれている。何という曲だったろうか。

不思議なほどにおいしいジンジャーエールを飲み切るころ、他のお客さんを見送った東村さんは、私の向かいの席に座った。

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